私の主任時代~名古屋編~(15)

手紙の内容は、当たり障りのない内容だった。うたちゃんらしい言い回しが随所に記載され、それはそれで一生の思い出にしようと嬉しかったが、プロ意識の高い彼女が私に合わせて理想のうたちゃん像を最後まで演じてくれたのかもしれない。

ただ唯一気になるフレーズがひとつあって、「ローズさんのせいで全部手紙が書きなおしになった」みたいな文面が妙に引っかかった。

いつからか、卒業式が最高のエンターテイメントの見せ場となった萌えしゃんどんは、卒業式に参加したご主人様全員へ卒業者から手紙を書く。と、いう文化が恒例になったのだが、この当時はまだその辺のシステム化があいまいで、手紙は卒業後に渡されるみたいな仕組みだったと記憶している。(誰が参加するかわからないから。そもそも予約制でもなかった)

彼女の手紙を妄想全開で好意的に受け取れば、本当はローズさんのことが好きなので連絡先を書いた手紙を渡そうと思ったけど、やっぱりそれはルール違反だから最後まで理想のメイドでいるね。と、解釈することもできる。

しかし、それをあまりにも自分視点のご都合主義と考えるなら、もともとは大した内容じゃなかったけど、ローズからの手紙が感動的だったので、わざわざ書き直してあげたのよ。と、解釈することもできる。

いずれにしても、私からうたちゃんへの評価は変わらないし、むしろ上がる2択なので彼女が一生の思い出へと昇華したことで、永遠の存在になったと思う。

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と、いうことを書き連ねて終われば、このエピソードもオシャレな思い出として終わるのだが、テクノロジーが発達した現代では、彼女の痕跡を追うことができてしまうのが、便利でもあるが、思い出として昇華できないテクノロジーの悲しさだった。

最初はブックオフでバイトを始めた。みたいな内容を書いていたので、どこのブックオフで働いているのかな?なんて、検索をかけたりしていて、今思い返せばかなり気持ち悪い。

でも、この業界にいれば、推しの子の何気ないツイートから、食事の場所や住所を検索したことくらい、一度や二度はあるだろう。むしろそれをしたことが無いのであれば、それは、本当の推しではないとさえ思う。

私自身は、その後、メイリーフなどに居場所を見つけるとともに、少し後ろめたいような、何もできないことに歯がゆいような気持から、うたちゃんのツイッターからは離れたが、その後の風の噂では、どうやら結婚をして、幸せにしいているらしい。

「便りが無いのは良い便り」と、いう言葉を聞くが、この業界を引退しても、いまだに頻繁につぶやいている人を見ると、少し心配をしてしまうのは私だけだろうか?

腹をくくってこの業界を生き抜こう。と、決意した人以外は、若いうちにどんどんこの業界を引退してほしいと切に思う。

現在のつらい現状から、一時の現実逃避として一時復帰するのも構わないが、この業界は麻薬なので、少しの癒しを得ることができたのであれば、つらくても今の現状に立ち向かってほしいと心から願っている。

こうしてうたちゃんの卒業式を乗り越えたローズは、再び名古屋での仕事へと再び戻っていく。