私の履歴書51(82)

2006年の絶望の春は、希望の夏へと少しずつ移り変わり始めていた。

公務員試験は、基本的に自治体ごとに5月~7月にかけて学科試験が行われ、7月から9月にかけて面接試験が行われる。

面接試験は勉強をしてどうこうなるものではないので、学科試験さえ抜ければ、あとはわりと時間に余裕が持てる。

金銭的に困窮をしていたローズは、7月になると同時に、アルバイトを始めることにした。

選んだ先は、近所にあった「土浦ラーメン」厚さ4cm近くの極厚チャーシューを乗せたチャーシューメンが名物のお店だ。

ダサすぎる名前でお気づきの方もいると思うが、いわゆる地方の地元で「ウマイ!」といわれる、イナカライズされたラーメン屋さんである。東京のラーメン屋さんみたいな繊細さや気品はこれっぽっちもない。

お客さんも想像通り、ちょっとやんちゃな・・・端的に言えばヤンキー的な人やガテン的な人が多い。そこまではある程度予測はできていたのだが、そこで一番意外だったのは、深夜近くになると、キャバクラや風俗などのそっち系の人が思ったより来るというところだ。

時給が良いというところと人が足りないという点で深夜に勤務をしていたのだが、お店の一番のピークが意外にも深夜2時から3時。おそらくお店が終わった後に、みんなでそろってくるのだろう。

深夜過ぎにそっち系のお姉さんや、黒服の人で満席になる店内は、なかなか見られない光景である。最初は嫌だなー。とか、怖いなー。とか思っていたが、そういう人たちは意外にも?良い人が多いので、長く勤めているうちに、結構仲良くなれたのは面白い経験だった。

面白い経験といえば、キャバクラ譲の仕事を間近で見れたのが一番面白かった。キャバクラ譲の仕事と言っても、店内の仕事ではなく、いわゆる「アフター」や「同伴」というやつだ。

田舎過ぎて深夜に行くところが無いのだろう。来るたび来るたび、違うお客さんと一緒に訪れて、極厚チャーシューを食べている姿を見て、プロって大変だなー。と、思っていた。

また、お店の人などの身内だけで来ている時には、「ほんとあのハゲうざくてキモイ」とか「あいつの話、本当につまらなくて気絶しそう」などと、ボロカスにお客さんの悪口を言っているのを聞いた時には、キャバ嬢の闇を見た気がした。

お客さんの前では、めちゃくちゃ笑顔でニコニコ話を聞いて、「すごーい。また聞かせてください。」って、言ってるのに・・・・。

キャバ嬢の闇といえば、明るいところで見るキャバ嬢も闇である。大変申し訳ないが、地方のキャバクラにお勤めのお姉さんは、やはり地方のお姉さんレベルであり、光を当てた闇はなお一層の闇だった。

という感じで、地方の田舎の底辺のような生活は相変わらずであったが、それでも少し前の引きこもり時代の生活に比べて、相当ハリのある生活を送れた。何しろ働いたらお金をもらえてお風呂に入ることができるし、まかないとして、ラーメンを好きなだけ食べることができる。あと、生きている人間がしゃべる。

あまりアルバイト先を選べない環境において、かなり最適解な選択をしたと思う。そうこうするうちに、ローズは、いよいよ面接試験の結果を聞くことになる。

果たしてローズは、希望の仕事に就くことができたのだろうか?