私の新人時代(6)

人間の仕事というものは難しい。易しすぎる仕事であれば、一日8時間の時間があまりにも長く感じすぎてしまうし、逆に難しすぎる仕事であれば、精神的に追い詰められて生きた心地がしない。

オビニミジカシ、タスキニナガシ

と、いう言葉があるが、人生とは仕事に限らず、自分の友人も、パートナーも、すべてにおいて自分に100%フィットするものを見つけることは難しいのだろう。肝心なのは、いかにその事実に早く気づき、その事実に合った対応方法を見つけ出すか。が、人生を軽やかに生きるコツだと思う。

仕事にもそれなりに慣れ、休日の行動範囲も広がったローズは、ついに2008年1月2日に、秋葉原へと足を踏み入れることになった。

秋葉原を訪れようと思った理由は、ずばり「新年会のお土産」を、購入することだった。公務員は、とにかく飲み会が好きだ。なぜなら、仕事が特にないことと、おそらく旧時代の「飲みにケーション」というもので、自分たちの一体感を感じることがしたかったのだろう。

新年会、歓迎会、送別会。と、何かに理由をつけて、私の法人では飲み会を「所内」で行っていた。飲み会自体は、17:00過ぎから始まるのだが、その準備の為に、14:00くらいから近くのイオンなりなんなりでお酒やおつまみを用意してくるのは、新人の仕事であった。

民間でもお花見などと理由をつけて勤務時間中に場所取りなどをしているが、それと同じような感覚である。ただ、税金を投入されてその時間内にこのようなことをしているのは、個人的には納得がいかない部分でもあったが、何もせずにヤフーニュースを見ているよりは、「仕事感」があったので、喜んでやっていた。

2008年の新年会は、ローズから各所員へ「実家に帰宅した際の名物をお土産として持ってきてほしい」と、お題を出していた。

その辺のイオンのおつまみより、全国津々浦々のお酒やおつまみを集めたほうが、まぁ面白いだろう。と、考えたからだ。

しかし、実際にお題を出した幹事のローズが、そもそも「帰省していない」という事実に気づいた。千葉から茨城なんて2時間くらいで帰れるのだが、家族との仲がいまだに悪いローズにとっては、実家に帰る。と、いう発想は、当時から、今となっても無い。

その辺のアンテナショップなどで名物を買ってきてもよかったのだが、それでは面白みもないな。と、いうことで、「帰る=メイド喫茶」の、お土産を買ったら面白いだろう。と、いうことで秋葉原を訪れたのだ。お前はどこに帰ってるんだよ。の、ツッコミ待ちだ。

当然今までに、一度もメイド喫茶におかえりしたことが無い人間にとって、秋葉原とは、それ以上でもなく、それ以下でもない、薄っぺらいイメージであった。

世にはやるらしいメイドというものを、古臭い公務員社会に持ち込んだら、面白かろう。そんな気持ちで秋葉原に足を踏み入れたローズは、その後の人生を180度変えるくらいの「堕ちる」体験をしてしまう。前ふりが長すぎたが、いよいよローズは、初めてのメイドデビューを果たすのであった。。。