私の新人時代~大阪編~(28)

長くコンカフェに通っていたが、自分が現役でお店に通っているときに、卒業発表を聞くことは、実はあまり多くなかった。

転勤の多い仕事だったので、相手が卒業をしてしまうより、自分が異動で卒業をしてしまうため、遠方で卒業の話を聞いても、「寂しいけど、まぁ仕方ないか」くらいの気持ちにしかならなかった。

なので、ちろるちゃん・くるみちゃんの卒業を聞いたことは、コンカフェ人生での一番のショックだったと記憶している。

特に、ちろるちゃんは、大学4年生で就職先も決まっていたので100%卒業するとはわかっていたけど、くるみちゃんについては、大学を中退したフリーターであり、卒業するなんて夢にも思ってなかったからショックが大きかった。

当時は何をどう判断したのか今となっては忘れてしまったけど、ちろるちゃんが、自分が卒業するのが寂しいから、ついでに一緒に卒業しようなんて誘ったんじゃないか?と、思い込んでいた記憶がある。

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くるみちゃんについては、卒業をしてしまうとわかってからどうしたか?と、言うと、いつものごとく、ローズは特に何もしなかった。

ただ、特に何もしなかったが、とりあえずくるみちゃんにプロポーズをしたことだけは、自分のコンカフェ業界における黒歴史として覚えている。

何を言っているかわからないと思うので、解説をしようと思うが、ディズニーのお土産として、ローズはくるみちゃんには、ミッキーか何かの指輪を選んで買って帰ってきた。

その指輪を、バレンタインの日にゴディバのチョコを買ってきて、中身のひとつをこっそり指輪と入れ替えた。

当時のポコには、リフレなんてしなくても、ただ普通に指名した女の子とお茶が飲めるというサービスがあり、そこにくるみちゃんを呼び出して、ゴディバ好きだったよね。買ってきた。一緒に食べようと渡したのだ。

チョコが大好きなくるみちゃんは、喜々としてチョコを食べすすめていくのだが、当然、チョコのひとつが指輪であることに気づく。不思議そうに指輪を取り出したところで、くるみ。長い間待たせたね。結婚しよう。と、いう手の込んだプロポーズ「ごっこ」である。

くるみちゃんはプロなので、驚いてくれたり、笑ってくれたりしてくれたが、今となってはなぜこんなことをしたのかと思うほど、なかなかキモイし、自己中な行動だと思う。

ライブなどのオタクは、リフトなどで目に見えやすいキモさがあるが、コンカフェ系のオタクは、目に見えづらいキモさを醸し出してくるのでなかなか厄介である。

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オタクが良く発する言葉として「結婚してくれー」と、いう言葉があるが、オタクにとって、結婚という言葉はどういう意味があるのだろうか?

私も一時期盛んに使用していたが、もちろんオタクには、相手の人生を背負うほどの覚悟がある重い言葉ではなく、相手と一緒に幸せを作っていくものだ。という協同の意識もなく、ただただ自分が幸せになりたいという、自己中の極みのような独りよがりの言葉だと思う。

結論、オタクが女の子と結婚どころか付き合うこともできないのはなぜかというと、「相手」の視点が決定的に足りないからだ。

「ネタに走る」と、いう表現があるが、「ネタ」とはつまり自分のための行動であり、相手は決して望んでいない。むしろ自分が気持ちよくなるために、巻き込まれた女の子は不快感しか感じないだろう。

そこで、お金を払っているのは自分だし、相手と付き合おうとか1%も考えていない。と、割り切って遊んでいるならまだ救えると思うのだが、こんなことをしていながらも、もしかして女の子は、自分を受け入れてくれるんじゃないだろうか?と、勘違いできるのが、痛いところである。

くるみちゃんの卒業の際には、特に好きだとかそういう言葉を入れるわけでもなく、ご飯に行こうね。みたいな手紙を送ったが、当然ながら、返事があるわけでもなかった。

今となっては、100%脈なんてなかったと思うけど、人生の先輩として、てんちょ~が素晴らしい見本を見せてくれたのだから、せめてもう少し素直になってればよかったのにな。と、思う。

そして、それにもまして申し訳ないな。と、思うのが、ちろるちゃんに対して、何故かくるみちゃんを卒業させたみたいに思い込んでいて、当時のローズは厳しい言葉を書いてしまったような記憶がある。

戦略としては、最低かもしれないけど、くるみちゃんに対して曖昧な態度を取りながらちろるちゃんにも、ご飯でも誘えばよかったのかもしれないけど、そこは変にそういうのは良くないな。と、思っていた自分がおろかだと思う。

そして、そういうのを抜きにして、もっと最後まで優しくあげればよかったな。と、今でも、ずっと、後悔している内容である。できるのであれば今からでも謝りたい。

この件だけじゃないが、この業界、長く通っていれば謝りたいことだけが重なっていく気がする。みなさん、本当にごめんなさい。

そんな形で苦い思いを乗り越えながら、大阪の1年目は終わりを迎える。この年は珍しく異動がなかったので、ローズにとって2年目の大阪が始まろうとしていた。