私の主任時代~名古屋編~(8)

教育業界において、集客の3月が終わると、次は授業準備の4月が始まる。授業準備は、何をすることかというと簡単に言えば、事前に抑えていた講師のスケジュールと、受講希望の生徒の時間割をマッチングすることである。

例えば月・水・金しか通えない生徒には、月曜に英語、水曜に数学という感じで割り振りをする。そしてさらにそこで割り振った生徒の人数に応じて、教室を割り当てる。

ここでやってはいけないことは、月・水・金しか通えない生徒に、「木曜」の授業を割り当てたり、英語と数学を希望している生徒に「化学」を割り当てたりすることなのだが、正直そこは気を付けていればそんなに難しいことではない。(ただし500人レベルでやっていれば、どうしても1~2件は生まれてしまうが)

ここから、他と「差」を生み出すためにどうするかというと、「どちらでも良い」組み合わせを、「明確な意図」をもって「偏らせる」ことにある。目の前の作業を「埋める」だけなら誰でもできる。いかにして「結果」を出すために「アクション」するかが仕事ができる人とできない人の超えられない壁だろう。

例えば、英語であれば、レベル別に「上級」「中級」「初級」とある程度は分けられているのだが、そこから、外部にはわからないが内部的には、「中級1」「中級2」「中級3」という風に勝手にレベル分けをする。

「線引き」というのは、本当に難しいものである。例えば、「○○高校」という括りで見ても、上位層と下位層では、実際にはかなりの差がある。同じように、こちらの杓子定規な診断テストを受けて一定のラインを作っても、結局中級の上位と下位では、まったくレベルが違うのだ。

また、当日のテストの調子によって、たまたまいい点が取れるかもしれないし、悪い点になってしまったかもしれない。さらに、本人のポテンシャルは高いけど、自分で復習をしてないから点が悪いだけのケースだったり、そもそも理解ができなくて、本番でも点を取れないケースかもしれない。

生徒のレベルだけでなく、講師や周りの生徒との相性を重視する場合もある。おとなしめな生徒だから、東進の「いまでしょ!」みたいな派手な先生よりは、地味にコツコツやる先生の方が合うかな?と、割り振ってみたり、高1くらいだと、男子・女子の性別で分けたほうが集団として雰囲気が良くなるので、やんちゃなクラスと真面目なクラスでまとめてみたり。

先生側も、ある程度指導する集団の属性がわかっているほうが指導をしやすい。こうした細かい地ならしを行っておかないと、生徒が満足をせずにやめてしまうこともあるし、働く先生もやりづらさを感じて他の予備校に移られてしまう可能性もある。

そういったいくつもの複雑な背景をもとにして、独自の基準で割り振りを進めていく。そんなにいくつものファクターをどうやって処理するのか?と、言われれば、それこそ「職人の勘」だとしか言いようがない。

今、流行のAIに、すべての振り分け要素を入れれば自動化させることも可能だが、今の技術レベルでは、まだまだ実現するのは難しいだろう。

そして何より、この作業をするのに必要なのが、自分の目と耳で聞いた現場の情報だ。

常に生徒の満足度を確認し、それを現場の先生にフィードバックする。また、先生からの情報をもとに、相性が良くなさそうな生徒を別の時間帯に移動をさせたりする。

私自身は、授業をすることはないが、生徒のニーズと実際にある商品(授業)をマッチングさせ続けることがマネージメントの仕事だと思っている。

コンカフェ・地下アイドル業界も本来はこうした顧客とメイドを調整する仕事が存在しても良いとは思うのだが、昨今は、働かない管理職層・コスト削減による管理職層の削減により、不幸なマッチングを多々見受けることにかなりやきもきする。

正直私に任せてもらえば、どこのコンカフェでも一瞬で売り上げ昨対120%くらいにはできるのに。

現場は現場で素晴らしい仕事であるのだが、本来、その現場を支えるバックヤード層の仕事が、もう少し評価(もしくは正しく行われる)されることが、これからの日本の発展のひとつのファクターだと思うのは私だけだろうか?