私の履歴書13(44)

ろーず部活やめるってよ。と、いうのは去年の話だったが、そのころ「おじさん仕事やめるってよ」と、いう話が聞こえてきたのは、確か同じくらいの時期の話だったろうか?

私には、父方にひとりのおじさんと、母方の方にふたりのおじさんを持っていた。父方の方も竜ケ崎市という20km程度離れたくらいの距離に住んでいたので遠いわけではないが、母方の叔父はどちらも同じ市内に住んでいたので抜群に交流が深かった。

仕事を辞めてしまったおじさんは、確か2~3年前にマイホームを建てたばかりくらいの時期だった。子供だった私でも、この人、何してるの?と、本気で思ったくらいである。

つとむおじさんは、「カスミ」と、いう地場のスーパーで勤めていた。茨城県以外ではあまり聞かないが、今調べてみたら、上場もしたことある、なかなかの会社であったと思う。

結婚したのも確かマイホームを買ったのと同じくらいの時期で、奥さんも同じ会社で働いていたはずだ。

最近、ブラック企業の問題などがニュースを賑やかしているが、確かに当時の仕事ぶりは、なかなかの激務だったと子供ながらに覚えている。確かおじさんも一度入院するくらいに体を壊していたのだから、新しい会社で働くのも悪くないかな?なんて思っていた。

次はどこに就職するのだろう?と、思っていたが、おじさんは、なんと、、、その後一切会社に所属することはなかった。奥さんをおそらく今でも働かせ、本人は何をしているかというと、、、おもちゃを集めていた。

当時は、なんでも鑑定団でちょうど古いおもちゃなどがにわかにブームになり始めた時期だった。

おじの家に遊びに行くたびに、輝かしいガラスケースの中には、(おそらく素晴らしいのだろうけど)古臭い怪しげなおもちゃが並んでいた。世間的には新築の家を買った新婚の旦那がするような仕事ではなく、子供ながらにコイツやべぇ。って、思っていた。

そういう業界には詳しくないので、おじさんがどの程度実力があるのかは謎だったかが、そおういう業界にはそれなりに知名度があるようだった。専門の雑誌にも載っていることはなんどか自慢されたが、それより奥さんの心境をインタビューしたいと個人的にはずっと思っていた。

ただ、時代は確かに彼に味方をしていた。世の中は、次第にインターネットが個人にも流行し始め、ヤフーオークションなどが流行りだした。

実際にどのくらい儲かっているのは不明だったが、それなりに食べていける分くらいの収入はあるようだった。しばらくしたら、ナニワ金融道に出てきそうないかにも怪しい若手のおにいちゃんが部下になっていた。

一見華やかに見える業界かもしれないが、実は地味な仕事の連続であることは、休日に一度仕事を手伝ってもらったことで記憶に深く残っている。

当たり前だが、こういう古物業は、商品を仕入れなくては売れないので、休日は田舎の雑貨屋さんや古民家を地味に回り、倉庫などにいらない商品が無いか見せて回ったりするのである。

また、田舎だと定期的に神社やお寺で古物市、フリーマーケットを行っているのでそういう場所を地味に回る。宝物に出会う可能性もあるが、大部分は私から見れば、ほとんどゴミに近いものをなんでこんなに買ってるのか?と、いう感じのことをひたすら繰り返していた。

おじさんの奥さんは、昔からなぜか私のことを可愛がってくれていいたのだが、今になってしみじみ思う。

あー。きっとたぶんおじさんに似ていたからだな。と。

父方も、母方も基本公務員の家系で、実際に、仕事をやめたつとむおじさんの兄であるひでおじさんは、郵便局で勤めていたし、今も勤務しているはずだ。

遺伝子のせいにするわけではないが、きっと私が仕事を辞めたのも、このおじさんの血を引いていたせいなのかもしれない。

あのころこいつやばいな。と、思っていたつとむおじさんの年齢は、確か30~35歳くだいだったはずだ。

ラクタばかり集めていたとはいえ、曲がりなりにも自分で自分の食い扶持を稼いだおじさん。

私も自分だけの働き方を見つけられるのだろうか?