私の新人時代(3)

社会人のひと月目というものは、自分の想像以上に疲れが出るものだ。大学時代の自堕落な生活とは打って変わって、規則正しく、息苦しい環境にガラッと変わるので、どんな職場でも目に見えないストレスは溜まってくる。人間は、思ったより環境の変化に弱いのだ。

と、複数の会社を経験した今なら思うのだが、当時の私は、そんなことを微塵も感じていなかった。それくらい、独法の職場というのは、人生の中でもっとも緩やかだった。

学生と社会人の一番の違いは何かというと、ズバリ収入だと思うのだが、皆さんが思い描く恵まれた「公務員」とは違って、若いころの公務員は、かなり薄給で決して楽な環境ではなかった。

1年目の年収で言えば、300万~350万円ほどだろうか?

なぜそこで50万も幅を持たせたかというと、どこを区切りとしてみるかによってボーナスの分が違うという点と、残業代が部署によってどこまでつけられるのか。と、いう程度の違いにすぎない。

恵まれているように思える公務員だが、その一番のメリットは、どれだけサボっていようと遊んでいようと、クビになることが無く、さらに「永続的に」昇給をしていくというところである。

確か私の月給は、残業代抜きだと、19万円くらいだったと思うのだが、毎年およそ6000円くらいは昇給をするのである。

35年勤続すると6000×35=21万円アップする。すると、残業代抜きで、およそ40万円の月収になり、ボーナス年4か月を鑑みると、「最低でも」640万円の年収が、退職間際には確保されるのだ。これは、行っている職務内容からすると破格である。

私のブログを読んでいる人からすると、「え?ちょっと待って?でも、仕事暇だから残業代なんてなくない?」と、いう疑問を持った人もいるだろう。

そう。その通り!

基本的に多くの職員は、残業などする必要もないのに、何故かみんな残業をするのである。

部署の忙しさや予算によって違うのだが、だいたい月20時間分くらいは、全員にいきわたる予算がついている。だから、もらえるものはもらっておこう。と、いうことで、みんなお昼間にはだらだらしていたくせに、何故か17:00を過ぎてから忙しそうに働き始めるのである。

これぞ無駄中の無駄。である。

時間とお金をダブルで消費。

まさしく無駄中の無駄である。

公務員が残業をするのは、実はもう一つ理由がある。それは、「予算主義」というものである。

予算というのは、大手の企業ではどこでも存在していて、年間でその部署やグループが使える金額を指しているのだが、普通年間1000万円かかる予定だったところを、800万円に抑えたら民間であれば褒められる。褒められるどころか、場合によっては浮いた200万円のうちの半分をボーナスでもらえる可能性もあるくらいだ。

ところが公務員の発想は真逆である。

1000万円予算を計上したけど、君たち200万円余らしたから、来年からも、800万円で行けるよね?と、言われてしまうのである。

これで努力をしようと思うだろうか?

まるで頑張って宿題を早く終わらせたら、早く終わったなら別の課題をやりなさい。と、いう母親の悪癖みたいなものである。

頑張ったら頑張った分だけ、自分たちの予算や人員を減らされてしまうので、公務員たちは自分たちを守るために「忙しいフリ」をする。そして、そこにうわべだけの無駄な予算と時間が消費される。

大のオトナの仕事なんて、クソみたいなものだ。

最初は一人だけ早く帰るのも変だし、お金ももらえるなら残業しようかな。と、付き合い残業をしてみたが、あまりにもあほ過ぎるので、3か月を過ぎるころには、帰れる日は定時でさっさと帰るようになった。

現在8人でしている仕事。3年後にはひとりで全部回せそうだな。と、思いながら。

残業代を入れないと、毎月の手取りは14万円前後だったが、公務員の唯一素晴らしいところは、「宿舎」に住めるところにある。

わずか4畳半の共同トイレ、共同のお風呂であったが、毎月の家賃は、およそ1400円。地域の相場からすると3万円前後は得をしていることになるので、これでようやく大卒の民間社員と同じくらいの待遇となった。

しかし、実際には住んでいるアパートはあまりにもぼろく、汚すぎてお風呂なんて入る気になれないので、ローズは社会人になっても家でお風呂に入れない生活が続くのであった・・・。