私の新人時代(18)

新しい職場で勤務が始まる3日前。私の携帯に突然電話がかかってきた。

「こんにちわ。今度から一緒に働く××の山中です~」

突然かかってきた電話口の向こうからは、あふれるほどのキラキラオーラがあふれていた。

「ローズさん、素晴らしい電話対応ですね。良い人そうで良かった。一緒に働けることを嬉しく思います。これからよろしくお願いしますね」

不意打ちにかかってきた電話にあくせくしながら、ローズは最後に締めくくられた言葉に「上手いな」と、素直に感心した。

当時の私がどんな電話対応をしたのか記憶が無いが、公務員という、電話対応の悪い見本の巣窟にいた私が、良い対応をしていたとは到底思えない。

しかし、こう言われて嫌な気持ちをする人はいないし、人間は期待をされればそれに応えようとする素直な生き物だ。

入社前の不安なもやもやは一気に消え去り、新しい職場で働くことをローズは待ち遠しく思っていた。

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千葉から次に移った職場は、神奈川と東京の境目にある町田市。

てっきり東京都民に戻れると思っていたら、住所が神奈川県だったのでびっくりした思い出がある。

新宿から小田急小田原線で約30分。駅前には多くのショッピングビルが立ち並ぶが、基本は住宅街の中のターミナル駅なので、23区内のような都会感はない。

ローズは、その点においては少しがっかりしたが、学習塾という観点においては、都会のど真ん中よりも、ちょい田舎の住宅街のターミナル駅は最高の立地だった。

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ローズの次の仕事はいわゆる予備校運営というものだった。塾や予備校に勤めている。と、いうと、先生なんですか?と、よく聞かれるが直接生徒に何かを教えたりはしていない。

立場上「先生」とは言われるが、基本的には入学の受付案内・手続きをしたり、講習の相談に乗るだけの簡単なお仕事だ。

先に謝っておくが、この予備校運営という仕事は、前までの環境と打って変わって、女子と若さに囲まれた仕事だった。

当たり前だが、お客さんは、基本的に全員15歳から20歳前後。(浪人生もいるため)

さらに、男子と女子だと、女子の方が塾など、決められたシステムでコツコツやるケースが多いので、4:6前後で女子高生の方が多い。

今までは、女性と話す機会すらなかったのに、女性という括りどころか、女子高生と話し放題。と、いう恵まれ過ぎた環境で、コンカフェに通うローズは、よほど女子が好きなんだろう。自分でもそう思う。

さらに、予備校も1000人近くの生徒を抱えているため、中には有名人もそれなりの確率で発生してくる。

個人名はもちろん出せないが、いわゆるAKB系列や、フィギュアスケートをやっている生徒、野球で甲子園に行く生徒まで、今までとは打って変わった「若さ」と「未来」に触れられる最高の仕事であった。

こいつ普通に可愛いなー。タレントみたい。と、いう生徒と、密室で面談をしてお金をもらう。

世の中には天国みたいな仕事があるんだな。

ローズは、職業選択の大切さを、しみじみと学んでいた。仕事選びは、本当に大切である。