私の新人時代~大阪編~(15)

ブログを書き始めてから、ローズがどういう人間かということが、めるるさんにも少しずつ伝わってきたようだ。

相変わらずお店ではほとんど言葉を交わすことはなかったが、言葉は交わさなくても、ブログと接客を通じてなんらかの意思疎通はできているように感じられる毎日だった。

めるるさんとの想い出といえば、おもちゃの指輪をあげたことだ。何がきっかけだったか忘れたが、めるるさんに結婚してー。と、いうことで、100円ショップで買ったおもちゃの指輪らしきものをプレゼントをした。

コンカフェにおける男性側のプレゼントなんて、ほとんどが自己満足で、プレゼントを渡すまでで完結をしているのだが、めるるさんは、驚いたことに、何故かその日はそのおもちゃの指輪をしながらお給仕をしてくれていた。

自分でも子供じみた自己視点の行動だな。と、思っていたが、まさかそこまでしてくれるとは思わず、基本的に誰のどんな行動にも興味が無いローズにとって、忘れられない小さな嬉しい思い出となっている。

人間は、予想通りのサービスでは満足せず、予想外のサービスで、はじめて印象に残るからやっかいだな。とも、思う。

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ところが、メイド喫茶のお別れは、いつも突然やってくる。せっかくお店にも毎日通い、なじみはじめ、ブログでの交流も始まったある日、めるるさんは突然の卒業発表をした。

ここを読んでいる人はオトナなので別に変に気遣う必要もないが、学生ではない、妙齢の女性が仕事を辞めるのは、ほとんどが結婚するか、妊娠したかのどちらかである。

体調不良・田舎に帰る・家族の介護、お昼の就職先が決まって。などと、色々な表現があるが、感覚では70%前後結婚・妊娠がらみだと思う。

卒業する本当の理由を言わないのは優しいのだろうか?それとも冷たいのだろうか?

最近AKBグループの誰かが、総選挙でファンの前で結婚発表をしたのを見た。「みんなには自分の口から伝えたくて」と、言っていたが、それはファンのためではなく、なんて自己中心的な話だと思う。自分がすっきりしないから、それを受けとめてほしい。とは、またわがままな話だ。

企業が絡んだ大手のアイドルは、完全に恋愛を売り物にしているので、ご法度だと思うが、ただ、当時のポコの自由さ加減だったら、別に隠さなくてもいいのにな。とも、思っている。

ただ、どんな人間も必ず恋をして、結婚するという現実を、わざわざ無菌純粋培養のオタクが知る必要はないのだろうか?それとも、わずかでも将来の結婚可能性を上げるために、つらいことでも知った方が良いのだろうか?

この問題は、勉強ができない子に、大丈夫。今はまだまだだけど、このまま続ければ、必ず合格できるよ。と、いうべきか、現実を見ろ。今までの自分の行いを反省し、努力しろ。と、言うべきか迷っていたこととすごく似ていると思っている。

どちらが正解かということについては、いまだに答えはわかっていないが、少なくとも、この時代は、まだまだ真実を教えるべきではなかった時代だったようだ。

そうして、ポコスターレベルワンは、あんちゃんが2代目の店長に選ばれ、新しい時代を迎えることになる。