私の新人時代~大阪編2nd~(7)

繁忙期が終わるとそれなりの忙しさはあったものの、再びローズは毎日ポコスターにおかえりする日々に戻っていった。

せっかく痩せた12kgの体重も、毎日の日替わり生活であっという間に体重は戻っていった。それが幸せなのか不幸せなのかは、今となってもわからない。

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「店舗運営」と、いう目線では同じ仕事をしていたあんちゃんだが、店長に就任してから半年も経つと、目に見えて疲弊しているのがわかるようになっていた。

これは、管理職としての仕事の多さも関係しているが、結局はなんだかんだで彼女がシフトに入り過ぎ。と、いう点が多かった。

彼女自身が言っていることだが、私から見ても、あんちゃんはどう見ても店長には向いていないタイプだと思う。

彼女が決定的に管理者に向いていない理由は、「決断」ができない点にある。

管理職をしていると、お客さんも働く女の子もそれぞれがそれぞれに好き勝手なことを要望としてあげてくる。なかには二律背反的に達成不可能な事案もあり、その場合には、いずれか一方を「切り捨てる」という判断をくださなくてはいけないのだが、そういうことが苦手なタイプなのだ。

結局「少数派」の意見を聞くために、自分自身を犠牲にし、無茶な働き方をするので、短期的に見れば、成功しているように見えるが、長期的に見ると、継続性が無いので、破たんしてしまう働き方をしている。

全体的な視野を持ち、バランスを取る。と、いう意味での仕事としては完全に失格である。

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ただし、これは彼女に限ったことではない。

私の個人的な経験上、メイドさんやアイドルさんは、上記のようなタイプが多い。外面を優先して誰にでも良い顔をしようとして、結局自分自身を犠牲にする。

別に、それは自分で選んだ道なのだから、どういう結果になろうと本人が満足すれば構わないのだが、ここで厄介なのが、選んだのは自分のくせに、断れないのは自分のくせに、お客さんや一緒に働く女の子の文句をあとでだらだら言うことである。(もしくはある日、急に塩対応になったりする。)

この業界、見た目「良い人」に見える人は、ただの八方美人で、気が弱い、内弁慶な人が多く、おだてられたらすぐ気にのぼるお調子者で、本当にお客様のためになろう。と、思って働いている人などほとんどいない。と、いうのが、長い経験で人間を見てきた結果である。

たまに、あの店長は、「冷たい」「こちらの言うことを全然聞く耳持たない」と、揶揄される店長がいたりするが、意外に長く続くお店というのは、そういう「一部」から嫌われる店長がいたほうが上手くいくケースが多い。

本当に「優しい」というのは、私は「決断」ができる人だと思う。

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ついでなので、もうひとつこの業界を見てきて腹ただしいのが、そういう世間的に見ると、判断力と気の弱い女の子に付け込んで、色々と無理難題の厄介な要望を出してくるお客さんがいることである。

断れないことをいいことに、自分中心の要望を出して、女の子を困らせる。

困った女の子は、どうするかというと、最初は仕方ない。と、いう気持ちで、その対応をしているが、一定の限界を超えるとどうするかというと、そのお店自体。時には業界自体を辞めてしまうのだ。

本来であれば、お店の店長に相談をしたり、お客さんに直接そういうことは難しいです。と、相談をしてバランスを取ればいいのだが、調整能力が皆無なので、「ゼロ」か「ヒャク」しか判断を下せないのだ。

こういう厄介客のせいで、この業界を去って行ってしまった人がどれだけいるだろうか…。

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しかし、これまた腹正しいのが、何故かそういう断るのが下手な女の子ほど、面倒なお客さんの所に吸い寄せられてしまうことだ。

「人に頼られる」と、いうのは確かに麻薬みたいなものだ。自分の力で相手が喜んでくれる快感を知ったら、確かに普通の要望では、満たされないだろう。

だから、女の子の為に無理を言わないようにしよう。と、気遣っている普通のお客さんより、厄介な客もそれなりにモテてしまうのが腹正しい。

そして、自分から近づいて行ったくせに、普通のお客さんに、厄介なお客さんの愚痴を言うのも腹正しい。

これも世間全体で見れば、「役割分担」ということで、それぞれがそれぞれの職務?を全うしているだけなのかもしれないが、真面目な人ほど報われないこの業界は、なんとも切ない業界だな。と、長くいればいるほどつくづく思う。