私の主任時代~名古屋編~(13)
萌えりぃという居場所を見つけたものの、月に2~3回行けば満足で、それ以上通おうとは、なかなか思えなかった。
理由のひとつはやはりチャージ+ドリンク代の1000円/時間というシステムだった。終日いたら約1万円かかってしまう。もともと同じカフェに一日中いる。と、いう発想がおかしいのだが、休日の使い方をだらだらとその場所で過ごす。と、いう大阪式に慣れてしまった私には、今では普通となってしまったが、当時は抵抗があった。
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「グラスホッパー」という言葉がある。もともとは、「バッタ」という意味の言葉だ。しかし、BARの世界では、入ったお店でゆっくりせずに1杯だけ頼んでは、また別の店をぴょんぴょんと飲み歩く人を指す言葉となる。名古屋では、このグラスホッパー式の楽しみ方をする顧客が多かった。
あまり長居をしても、メイドさんとの関係が悪くなるし、自分の好みのメイドさんがいなくても楽しめなくなるので、1ターンで席を立って気分を変える。
時間制の概念が無いと、女の子も顧客も固定されて雰囲気がなんともどろっとした感じになるのだが、「1時間」という観念が顧客の固定化を妨げるので、なんともお店の風通しが良い感じがするのは、ひとつのメリットだと思う。
お店側も基本は延長させることをメインに接客をしているが、常につなぎとめるのは無理なので、オーナーは1店舗経営をするというよりは、3~5店舗くらいを近隣にオープンし、店舗枠を超えた囲い込みをしているのも名古屋の特徴と感じた。
名古屋はひとつのお店に長期滞在するよりは、メインの店舗をひとつ持ち、ぐるぐるぐるぐると、空き時間はグループ店舗を回るのだ。
これは顧客の寿命を延ばすのに、非常に良い風習だと思う。先日DDを辞める宣言をしたオタクの人が、「単推しはよくないよ」と各方面から諭されていたが、店舗推しだけでなく、グループ推しになるほうが、色々な面でのリスクマネジメントとして効果的と感じる。
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萌えりぃグループも、正統派?の萌え系メイド喫茶を出店したあとに、こじんまりとした2号店、男装喫茶のシャイニングスターズを出店していた。
最初は萌えりぃにしかご帰宅していなかったローズだが、段々と2号店に足を運ぶようになり、栄にあったシャイニングスターズにも通うようにもなり、名古屋式のグラスホッパーを楽しめるようになっていた。
もちろん、短時間で店を出るお客が楽しい。と、感じるためには、それなりの接客技術を持っていなくてはいけない。「ちょっと忙しかったから」「料理を出すのに手間取ったから」という言い訳は一切通じず、その時訪れた1ターンのみの一期一会的なシステムが、名古屋のメイドさんの能力を高めていたと思う。(※逆を言えば高い料金で満足させられなければかなりシビアな意見をもらう)
「面白さ」では、大阪の人間というようなイメージがあるかもしれないが、大阪のメイドははっきり言って、たいして会話もできないし面白さもない。会話そのもの技術から、全体への気配り、オペレーション能力、イベント立案・実現力まで名古屋のメイドさんのほうが完全に上だった。自由に気軽に働けるのも大事だが、人間は厳しい環境に追い込まれるとそれなりに成長をするみたいだ。
こうして名古屋のコンカフェ文化にもなじみ始めた時、萌えしゃんどんでは、うたちゃんの卒業が発表された。
卒業のために、わざわざ名古屋から大阪に行くなんて考えられないことだと思っていたが、うたちゃんの卒業なら・・・。と、ローズはご主人様として、またひとつ(無駄に)階段を上り始めていく。