私の主任時代~名古屋編~(20)

名古屋への転勤をきっかけに、コンカフェを引退しようとしていたローズは、仕事関係が順調だったこともあってか、想像以上にコンカフェの減帰宅?に成功していた。

過去には一日2回、3回のご帰宅が当たり前だったヘビーカムホーマーだった生活が、週に1回程度のカムホームで収まっていたからだ。

しかし、コンカフェに費やしていた時間が、すべて仕事に吸収されるわけはなく、その空いた時間は、名古屋での喫茶店文化に費やされることになった。

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よく話題になる名古屋のモーニングだが、実は名古屋市内においては、たいしたモーニングは存在しない。

テレビでよく話題になるような豪華なモーニングは、北へ20kmほど離れた一宮市と呼ばれる地域の話であって、名古屋駅近辺のモーニングは、外部から作られた偽物の文化なのだ。

しかしながら、名古屋市内にモーニングが存在しないかというと、決してそんなことはない。

テレビのような豪華なモーニングは存在しないが、ごく普通の、ありふれた喫茶店のモーニングは、そこかしこに存在をしている。

と、いうか、その喫茶店の数は常軌を逸している。正確な数は把握していないが、確か名古屋の自宅から半径2km内の喫茶店の数は、30~50にものぼるほどの数だったと記憶している。

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茶店のモーニングの何が楽しいか。と、言われれば、そのお店ごとに、微妙にセットの内容が違うのがとても楽しい。

「トースト+ゆで卵」が、オーソドックスなサービスなのだが、パンがハムサンドになっていたり、厚切りトーストになっていたり、伝統の小倉トーストになっていたり。

玉子もゆで卵だけじゃなくて、スクランブルエッグだったり、ミニオムレツだったり、何故かだし巻き卵だったり。

他にもバナナがついたり、みかんがついたり。コーヒー頼んでるのに、乳酸菌飲料が有無を言わさずセットになっていたり。

きっとそれがそのお店の「当たり前」なんだろう。家族が違えば常識が違うが、まるでその人のおうちに泊まって朝食を食べた気持ちになれるのが、普通の喫茶店の醍醐味だ。

中には、本当にその家の家族の人が、朝食代わりに自分の店のモーニングを食べていたりして、女子高生が慌てた雰囲気で階段を下りてきて、目の前でパンを加えだす姿を見て、色々妄想するのもまた楽しみだろう。

そんな家庭じみたおうち風の喫茶店から、何故かメニューにマリアージュフレールの紅茶をそろえているオシャレ喫茶店まで、通りがかりに見かけるあの喫茶店には、どんな物語が待っているのだろう?と、ついつい毎日店を変えてはモーニング通いをするのがいつしか趣味になっていた。

名古屋の喫茶店は、遠くからでも見つけてもらいやすいようになのか、ピカピカとパトランプが光ったりしており、道を歩いているときに、その輝きを発見したときの胸のドキドキは今でも懐かしい。

コンカフェも好きだが、そこにある新しい何か。を、見つけるのもまた楽しい。

コンカフェに限らない、カフェを愛し始めた28歳の季節だった。