最後の願い。最後の仕事。の話。

死に行くものの願いは、
ひたすら利己へ向かうのか、
それとも、自分が逝ったのちも続いていく時間へと想いをはせ、
残される者達へ向くのでしょうか。


by 「モルヒネ」 原作:安達千夏 漫画:斉木久美子
あとがきより


メイドさんに勧められた漫画を勝手に解説していくシリーズ。
今回は、ずいぶん昔に勧められた漫画だけど、
モルヒネ」について語ってみたいと思います。

モルヒネのあらすじは、要点を超まとめれば次のとおり。
(※ネタバレ注意です。)

1.主人公(女)の元に天才ピアニストの元彼が帰ってくる。
2.しかし天才ピアニストだった元彼は病魔に犯されていた。
3.その元彼に困惑する主人公。
  しかし、彼女は元彼のために最後を看取ろうと決意する。
4.元彼の望みどおり最後を看取った主人公。
  そのとき彼女は元彼の行動の真意を見抜けなかったが、
  後に彼が遠い過去にした約束を果たしに来たことに気づき感動する。

と、いったところでしょうか?
この漫画のひとつのポイントは、
時間を越えて彼女を愛してくれる彼氏って素敵☆
ってところでしょうか?(ちょっと簡略化しすぎだけど)


確かに女性側の視点で見た場合これだけ自分が愛されてたんだ。
って、気づいた感動にトキメキを覚えるかもしれませんが、
逆に男側の視点で見たときに、この彼の行動には悲しみすら覚えます。


天才ピアニストだった彼は、その才能で数多くの栄光を築いてきた。
しかし、病魔に冒されてその才能を発揮できなくなった彼にとって、
今まで築いてきたはずのものはあっけなく崩れ去るのでした。

自分自身の人生を振り返ったときに、
自分を必要としてくれると感じられるものは、
昔の彼女との約束しか思い出せなかったのでは無いでしょうか?

唯一の残された約束にすがるしか
自分の人生の意味を見出すことが出来なかった。
だから、彼は必死でその約束を果たそうとした。
とも、読み取れるような気がします。


自分自身のアイデンティティの一部を失ったとき。
自分が今まで行ってきたことは何なのだろう?
自分が自分たるために構成されてきた要素とは何なのだろう?
と、思い返すことって無いですかね?

簡単に言えば、自分がひとりぼっちだと感じたとき。
「昔はこんな仲間が居たなぁ。」とか、
「前の彼女はこんなだったっけ。元気かな?」とか。
ずっと昔にあった自分が急になつかしくなり、
そのときあった感覚に触れてみたいと思うような感情です。


やっぱりひとはひとを通じてしか
自分を知ることが出来ないものだと思っています。

自分一人で悩んでいたって決して結論は出ないのです。

ピアノだけに人生を捧げてきた元彼にとっては、
唯一自分が人生に残してきた「約束」が彼女だけだったのでは?
と、少し穿った見方をすれば取れなくもないですよね。

こうやって考えた場合、元彼の行動は、誰のためのものだったのでしょうか?

自分自身の人生が確かにそこにあったと確認するもののため?
それともただ彼女を愛していたがゆえの純粋な行動??


何が利己的で他者的かなんて簡単には判断できそうもないですね。



この漫画を読んでこういう感覚については、
かなり共感できて、正直私も何度か同じような行動を起こしかけたこともあります。

でも、現実って漫画ほど甘くなくたいていは嫌がられるのよね。
昔の彼女に連絡すればするほど悲しみは増すのでやめましょう。(笑)


私は不器用な人間だから、人と繋がりを維持するのがとても苦手。
何を求めてるんだか知らないけど、
ぷいっと居なくなって、ぷいって戻ってきたりするけど、
その時は、「あぁ。この人はまた居場所がなくなったんだな。」と、
心の中で思いつつ表面上は、甘やかしてやってください。(笑)


そらさぁ〜ん。
ポーの一族は、必ず明日買いに行きますよ〜。

すみれさぁ〜ん。
バンパイアナイトもいつか必ず読むからね。


っていう。
約束をあちこちに振りまいて寂しくないと思い込むような。

そんな男の話。(笑)